医療法人 天裕会 学芸大 漢方クリニック 目黒区鷹番,学芸大学駅, 漢方内科・皮膚科

アトピー性皮膚炎の方へ

漢方治療を支えるもの ~アトピー性皮膚炎のかたへ

これまでどのような治療を受けてこられましたか?

ステロイド外用剤や抗アレルギー剤を使ってもあまり良くならなかったことから、漢方薬を試してみたいと思われたのではないでしょうか。

漢方薬は、ステロイド外用剤や抗アレルギー剤のように、すぐに症状を抑えることはできませんが、体質を改善しながら皮膚の状態も良くしていきます。

ただ、どんな病気も薬だけで治すことはできません。
生活の仕方や食事の内容、ストレスのかかり具合などが大きく影響していますので、それらを改善することがとても大切です。

 

「アトピー」とは

「アトピー」という言葉には、元々「奇妙な」「なじみがない」という意味があるのですが、そこからも分かるように、アトピー性皮膚炎というのは、なかなか複雑な病気です。単なるアレルギーの病気ではなく、皮膚の構造にも弱さがあります。

小さいお子さんの場合は、食物アレルギーがある場合もありますが、食べ物の制限を厳密にしすぎると栄養失調になり、かえって皮膚が弱くなったり、炎症が起こりやすくなったりします。

食物アレルギーがあって、食べるとすぐに反応が出るような場合は、その食べ物を避ける必要がありますが、そうでない場合はバランスの良い食事をすることが大事です。
 

バランスの良い食事とは

皮膚を作っている主なものにタンパク質があります。肉や魚、大豆などに多く含まれますが、口から入ったこれらのものは、分子の小さなアミノ酸に分解された後、体の中で新たに組み立てられてタンパク質として働きます。動物性が良いとか植物性が良いとかいうことではなく、その両方がないと体の中でうまく組み立てられません。

皮膚の深いところにはコラーゲンという線維があります。
これもタンパク質の一種ですが、このコラーゲンが合成されるには鉄分やビタミンCが必要です。
傷が治るときにも、このコラーゲンが大切ですね。

皮膚も一つ一つの細胞から成り立っています。この細胞の膜は脂質(あぶら)でできています。この細胞膜がしなやかでないと良い皮膚にはなりません。皮膚だけでなく、体の中のあらゆる細胞の膜が脂質からできていますから、良い脂質を摂らないと良い働きができなくなってしまいます。

脂質の中でもトランス脂肪酸(マーガリン、ショートニングなど)は、分子構造の特徴から細胞膜を硬くしてしまうので、避けましょう。

体の中では、炎症を起こす物質と炎症を抑える物質がバランスを取りながら合成されますが、このバランスが崩れると、炎症がひどくなってしまいます。このバランスに影響するのが、不飽和脂肪酸と言われるものです。オメガ3、オメガ6などという言葉を耳にされたことがあるかもしれませんが、オメガ3とオメガ6のバランスを1:4に持っていくことが理想です。オメガ3系の油には亜麻仁油、えごま油、魚に含まれるDHA、EPAなどがあります。一般的な食用油のほとんどはオメガ6系ですので、油ものを多く摂っていると、このバランスがすぐに1:10~30にもなってしまい、炎症が起こりやすくなってしまいます。 交感神経が高ぶったり甘いものを多く摂ったりすると、炎症を起こす物質を合成する方向に傾きます。
ストレスがかかったり甘いものを摂ったりして皮膚の状態が悪化したことがある方は、納得できるのではないでしょうか。

 

皮膚で炎症が起こりやすいということは、腸の粘膜でも炎症が起こりやすいと考えられます。腸に炎症があると、アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が入り込みやすくなります。上記のような炎症を起こしにくい油を摂ることを心がけるとともに、お通じの状態を整えておくことが大事です。腸内フローラ(細菌叢)を良い状態に保つには、乳酸菌のエサとなる繊維質をしっかり摂る必要がありますが、玄米を摂り過ぎると鉄の吸収を妨げてしまいますので、注意が必要です。乳酸菌も積極的に摂ることをお勧めしますが、日本人には植物性の乳酸菌、つまりお漬物が良いと言われています。

ここまでは主に食事について書いてきましたが、あなたはバランスの良い食事ができているでしょうか。当院では、食事に関するチェックシートをご用意しています。ご希望の方はスタッフにお申し付けください。このシートを上手に使って食事を改善していきましょう。

このように食事を改善しつつ、ビタミンやミネラルの不足が血液検査などから指摘された場合にはサプリメントで補うことも必要になってきます。

 

 

「ステロイドを使いたくない」

「これまでステロイドを使っても良くならなかった」「ステロイドでかえってひどくなった」「ステロイドが怖い」等の理由からステロイドを避けたいと言われる方もいらっしゃいます。しかし、炎症がひどく夜も眠れない、浸出液がひどくて普通の生活が送れない、という状態にまでなると、そのこと自体がストレスになり、かえって悪化させてしまいます。東洋医学的にも「眠れない」ことは気(エネルギー)を消耗してしまいます。気が消耗すると、水や血も足りなくなったり巡りが悪くなったりして、回復を遅らせます。

「かゆみで眠れない、起きてしまう」という状態を、ステロイド外用剤や抗アレルギー剤を使うひとつの基準としましょう。いったん治まって眠れるようになってから、少しずつ使う頻度を減らしていきましょう。これらの薬だけを使って症状を抑えた場合は、その後減らしていく途中でぶり返すことも多いのですが、漢方薬を使いながら食事や生活の改善を同時に行うことで、良い状態を保つことができます。

 

スキンケア

まずは皮膚を清潔に保つこと。

汗をかいたらすぐに拭きましょう。
夏場、小さなお子さんは日中もシャワーを浴びるなどして汗を流しましょう。大人でも帰宅後すぐにシャワーで流すと良いでしょう。
汗やほこりをきれいに落とすことが必要ですが、皮脂を取り過ぎないことも大事です。石けんよりも弱酸性のボディソープのほうが、皮脂を取り過ぎず、肌を傷めません。
 

 

そして、保湿。

アトピー性皮膚炎のかたは、皮膚の細胞と細胞の隙間を埋めるセラミドという物質が少ないために、皮膚から水分が蒸発しやすくなっています。水分をとどめておくための保湿がとても大切です。入浴後は、まだ体が濡れているくらいの状態で保湿をしてください。
皮膚炎がひどくて傷になっているところには、液体のものはかえって刺激になりますので、ワセリンが良いでしょう。
 

爪を切りましょう。

かゆいとどうしても掻いてしまいますが、掻くことによってできた傷から細菌感染することもありますし、アレルゲンが入りやすくなるため、新たにアレルギーを作り出してしまうこともあります。掻いてもできるだけ傷ができないように、爪はいつも短く切っておきましょう。
 

ストレスを溜めない工夫

これまで皮膚の症状が悪化した時を振り返ってみましょう。そのころ、どんな生活をしていたでしょうか?

受験勉強のとき? 一人暮らしを始めたとき? 社会人になったとき?

何らかのストレスが強くかかっていたのではないでしょうか。
精神的なものだけでなく、体の疲れや病気などもストレスになります。
人は生きていくうえでストレスが避けられませんし、ストレスによって成長するという部分もあるでしょう。しかし、強いストレスに長期間さらされていると、心身ともにバランスが崩れ、様々な症状が出やすくなります。

ストレスがかかっているな、と感じたら、早め早めにきちんと解消しましょう。
日ごろから、軽い運動、音楽、香りなど、自分に合ったストレス解消法を見つけておくと良いでしょう。
それでもうまく解消できないときには、漢方薬が役に立つかもしれません。